永遠の憧れの女の子 ー月組トップ娘役愛希れいかさん退団に捧ぐー その②

 

 

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そんなわけで,ちゃぴちゃんとの出会いは特段印象的ではありませんでした。

 

ところが,次に見た珠城りょうさんとの(愛称:たまきち・たまさま)トップコンビ初作品である『グランドホテル』とショー『カルーセル輪舞曲』をお正月に見た時(これも当日券でした)なんてすごい娘役さんなんだ!!とド肝を抜かれ,そこからちゃぴちゃんのことが一気に好きになったのです。

 

1928年のベルリンを舞台に、高級ホテルを訪れた人々が一日半のうちに繰り広げる様々な人生模様を描いたミュージカル『グランドホテル』。1989年トミー・チューン氏演出・振付によりブロードウェイで幕を開けたこの作品は、圧倒的な評価を得てトニー賞を5部門で受賞、その後ロンドンやベルリンでも上演されました。宝塚歌劇では1993年、涼風真世を中心とした月組がトミー・チューン氏を演出・振付に迎え、宝塚バージョンとして上演し、大好評を博しました。
長年の功績を称えられ、2015年の第69回トニー賞において特別功労賞を受賞したトミー・チューン氏を特別監修に迎え、2017年の幕開け、月組トップスター・珠城りょうの宝塚大劇場お披露目公演として、『グランドホテル』が宝塚歌劇の舞台に蘇ります。(宝塚歌劇公式HPより引用)

 

 

特にお芝居の『グランドホテル』。

ちゃぴが演じたエリザヴェッタ・グルーシンスカヤ役は,ロシア出身の伝説的なバレリーナで「5度目」の引退公演をベルリンで行うためにグランドホテルを訪れた。そこで主演の珠城りょう演じるフェリックス・フォン・ガイゲルン男爵と情熱的な恋に落ちる。

男爵と一夜を過ごした後,生きる希望と踊りたいという気持ちを取り戻し歌う「Bonjour Amour」。

 

彼女のお芝居は,まるで役が乗り移ったよう。

踊りが得意でその素晴らしさはもちろんのこと,表情や視線の使い方,所作や声色までがその役になっており細やかで繊細かつダイナミックな心情が客席まで伝わってくる。

 

すごい。すごいものを見てしまった。そう思った。

 

 

それからというもの,彼女の出演している過去作品をスカイステージ(宝塚専門CSチャンネル)で見て,また驚いた。

 

グルーシンスカヤのような妙齢の女性から,スカーレットピンパーネルのルイ・シャルル皇太子のような少年役,PUCKのハーミアのような少女の役まで,役の幅が広く,演じ分けが素晴らしいのはもちろん,すべての役が「役そのもの」で,感情が揺さぶられるようなお芝居をするのだ。

 

グランドホテルの次の公演は,『All for One』という三銃士をベースにした小池修一郎氏による新作一本物のコメディで,ちゃぴは男役と娘役を演じ分けた。あのグルーシンスカヤを演じた人とは同一人物とは思えないピュアで可憐でお人形のように可愛らしいルイーズ。すごい。

 

この後の全国ツアー公演は残念ながら見れなかったのだが,私はますますちゃぴちゃんが好きになっていた。

 

未婚の女性だけで構成される宝塚歌劇という非常に特殊な世界で,現実の男よりもかっこいいと言われる男役さんがたくさんいるなか,まさか,娘役さんが好きになるなんて。

 

清く正しく美しいタカラジェンヌの,日々の厳しい鍛錬や努力,お稽古に向かう姿勢,実は泣き虫な彼女の「努力だけはいくらでもできますから」という言葉や,相手役さんに対する心遣い。いつしか好きが憧れに変わっていた。

 

もともとあまり芸能人やアイドルには興味がなかった私。そんな私が毎年年末に各組の選抜メンバーが出演する『タカラヅカスペシャル』というコンサート形式のショーを見て,「推しが尊くて泣く」とはこのことか…という人生初めての経験をしたり。

 

その次に見たのは,宝塚では珍しい現代を舞台にしたお芝居『カンパニー』と上田久美子先生による初のショー作品『BADDY 』。BADDYの冒頭でちゃぴ演じるグッディが登場した瞬間,私は心の中で「5億点!!!」と叫んでいた。もはやちゃぴが登場するだけで感動できてしまう。ファンとはそういうものなのだ。

 

そんなちゃぴちゃんが,明日,宝塚を卒業する。

 

もしかしたら,卒業後も舞台でのお仕事は続けてくれるかもしれないけれど,タカラジェンヌとしての 愛希れいか は明日が最後なのだ。(つづく)